2018年7月10日火曜日

北極航路1

途方もなく広く、凍てつく海。
圧倒的な酷薄の美が、生命を限りなく際立たせている。
一切の虚構が消え失せ、むしろ何もかもが幻想のようだ。

というわけで北極に行ってきました。
執筆の合間に、こつこつ楽しんでアップしようと思います。
まずはハイライトを掲載。



ロシアの原子力砕氷船「50レットポビディー号」。
英訳は「50 Years Victory」。
第二次世界大戦での勝利50周年を記念し、造られた船であるそうな。
勝った相手は主にドイツだが、乗客にはドイツ人がおり、多くの日用品がドイツ製品であった。そのことに歴史を感じる。



白夜の蒼穹に昇る陽。
くっきりと浮かび上がる影の背後へ、それまで自分がいた場所が限りなく遠ざかる。
「旅」の思いが消え、心が未知の生活へ備える。



白く、ただ白い。
青ざめた白さだけが広がる氷原が、かつて数多の冒険家をいざなった無数の幻想を生み出した。



北極の王、ポーラーベア。
シロクマ、あるいは北極熊。
凍てつく海の上を、我が物顔で歩む、ゆいいつの獣。
彼らが闊歩するため、北極の鳥たちは今も飛び続けねばならず、アザラシたちは氷上に出るだけで命がけだ。
どちらも、南極で安息の地を得たペンギンやアザラシたちがさぞ羨ましいだろう。

ちなみにシロクマの肌は黒い。
毛を剃るとクロクマになる。
(※クマは超望遠でないと上手く撮影できないため、写真を分けてもらいました。Thank you!!)



分厚い氷を粉砕し、人々を難なく北極に運ぶ。
現在、北極点にまで確実に辿り着けるゆいいつの砕氷船らしい。
過去、百何十隻という船が北極を目指し、そのすべての経験知が、この一隻に集約されている。
乗船中は、人類の強さがいかなるものか、絶えず体感させられた。




江戸時代のコンパスの大人気ぶりを見よ。
おかげで様々な国の人たちと楽しく賑わえたことを大いに感謝します。
その針のご明察ぶりは後日ご紹介。



そして北極点到達につぐ、もう一つのメインイベント。
北極海へダイブ。
乗船した各国の乗客が、口をそろえて「Crazy!」と叫ぶ。
叫びながら、水着姿で次々に飛び込む。
未知への冒険は、かくして万人の娯楽となる。
苦難がもたらす知恵の果てに、遊び戯れる人間を讃えよ。
人間を生かさしめる摂理を讃えよ。


というわけで、大いにはしゃいだ。
飛び込んだあと、飲んでいるのはウォッカ。
寒中水泳を経験された方ならお分かりだろうが、「死」を感じるほどの冷たさに凍えた直後、体の内側から猛烈な熱が発せられる。体が生きようとして発熱するのだ。
自分に与えられた「生」を、手触りで感じられる瞬間でありました。




旅の体験は、やがてインスピレーションとともに執筆の体験へ。
そのときを楽しみに待ちつつ、今の執筆に励まねば。

つづく。