2017年7月2日日曜日

シュピーゲル・シリーズ完結



【シュピーゲル・シリーズ完結】
緑の森の マイヤリング
美しい夢は 終わってしまった
『「生」と「死」のウィーン』(著・ロート美恵 講談社現代新書 1991年刊)で紹介されている詩である。
この一冊を読んだのは、シュピーゲル・シリーズの着想を得る以前、おそらく96年にデビューする前のことだろう。以来、長く本棚に置かれ続けた。
確か2003年頃だったと思うが、短編の依頼が来た。それでなぜか再読し、「ミリオポリス」という架空の巨大国際都市をイメージするきっかけを与えてくれた。

端緒は、書の三つの言葉だったと思う。
「美しき亡骸」シエーネ・ライヒ
「亡骸の会食」ライヒエンシュマウス(マオス)
「世紀末」ファン・ド・シエクル

舞台はウィーン。一風変わったものが書ける気がした。
そうしてあるとき、ひと仕事するために喫茶店へ向かった。(当時は、異なる仕事ごとに場所を変え、喫茶店やファミレスを回遊していた。)

歩いていると、ふいに、カチン、とジッポライターの蓋を開く音が、どこからともなく聞こえてきた。
続いて、幾つかのイメージが訪れた。
人生は失望に耐えるだけと割り切る誰かがショートホープを噛むようにくわえている。
ナイフみたいに尖った目つき。不敵な態度。皮肉っぽい様子。
青い空を仰ぎ、にやりと笑みを浮かべて呟く。
「なーんか、世界とか救いてー」

よしよし、書けるぞ、と思った。
土中に埋まった何か大きなものの一部を見つけた気分だ。
あとは、そのイメージを壊さないよう注意しながら掘り出していけばいい。
無事に着想出来ると、そういう思いがわいて、ふっと気が楽になる。
そのときは、これで〆切に間に合わせられそうだ、と考え、安堵した。

それから10数年。
身を振り絞って、彼女ら・彼らの物語を、何冊も書き続けることになろうとは予想もしなかった。
最後の1行に辿り着いたとき、やっと解放されたと考え、安堵した。
最初のイメージが訪れたときと異なるのは、ついでに寂しさもやってきたことだ。
彼女ら・彼らは、物語の向こう側へ旅立っていった。
読者の手へ委ねられ、自分に出来ることは、もう何もなくなった。
「まだか」と問われて困ることもない。
彼女ら・彼らのその先は、読者の皆様のもとに漠然とした予感として訪れるだろう。

結末を見届けて下さった読者に心から感謝を。

書籍は7月1日発売、電子書籍は8月だそうです。
★修正★
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書籍は7月1日発売。電子書籍は、「BOOK WALKER」では7月1日配信、他の電子書店では8月1日配信予定だそうです。

なんと、そうだったんだ。