2015年8月19日水曜日

【創作四方山話 ビジュアル文化と三分割法】

現代はビジュアル文化が真っ盛りです。
テレビや映画に加え、ネットの画像や動画など、「百聞は一見にしかず」とばかりに視覚情報が満ち溢れています。

必然、現代人の理解能力は、どんどん視覚による理解を重要視するようになりました。
小説も、「映像が浮かぶような」文章が歓迎され、黙読ならぬ「目読」に重きが置かれるようになっています。

ビジュアル文化が普及する以前、情報は言葉によってしか伝えられず、どんな言葉も「耳で読む」のが一般的でした。耳に心地よい、響きの良い、口にしやすい、詩的な、当意即妙な、韻を踏んだような、「黙読」に適したものが好まれました。その方が、言葉を記憶しやすく、人に伝えやすいからです。

現代では、字面がわかりやすくインパクトがあり、一見して面白みがわかり、脳裏に映像が浮かぶような、視覚情報を重視した「目読」の言葉が好まれるのです。
どんな媒体でも「目で読む技術」が不可欠で、ニュースやコマーシャル、あるいは小説ですら、これを否定することはできません。

では「目で読む技術」には、いかなるものがあるか。

その基本となる構図は、美術の世界における美と調和の研究を経てのち、映画の世界で精査されることとなりました。
そのうち広く応用されている技術が、「三分割法」です。

まず、画(絵・フレーム・像)を、縦三つ・横三つに分割します。
画は、九つのエリアに分かれます。中心となるエリアを、八つのエリアが囲んでいる状態です。
また、縦と横の四つの線によって、四つの交点の位置が明らかになります。
そして人は、この四つの交点にあるものを「重要だ」と価値づけ、そこに何があるかで、画全体を価値づけたり意味づけたりするのだそうです。




三分割法とは、なるべく、この四つの交点上に重要な要素(人の顔・目・口元・手にしたもの・建物の柱や窓・相対する存在・群衆の中心人物……等々)を配置することをいいます。

人は絵のど真ん中に視線を集中させると思いがちですが、意外にも、そうではありません。
中心点というものには動きがないからでしょう。人は静止した中心ではなく、その周辺で動くものに意識を向けるのです。

これは映画だけでなく、他の媒体でも応用されています。ニュースやコマーシャルの映像のみならず、ポスターや本の表紙などであっても人の視覚情報に訴える重要なポイントとなります。

試しに、お好きな画像を、三分割してみて下さい。
四つの交点に、何があって何が無いかで、その視覚情報がどう変わるか考えてみましょう。

調和を感じるかどうか、綺麗と思うかどうか、ダイナミックかどうか…。

ぴったりと交点上に配置されていると、人は調和と秩序を感じます。
中央のエリアに美しいものを配置し、四つの交点上に美の焦点や添え物を配置すると、美しさが増したように感じます。
交点からあえてずらし、空白を創るなどすると、ダイナミズムが生まれます。
二人の人物が互いに見つめ合う画では、それぞれの人物の目や顔を交点に配置することで、画の意図が強調され、明白な構図となります。位置をずらせば、別のニュアンスが生まれます。

好きな画の四つの交点と九つのエリアに何が配置されているかを見て取り、「何が自分の心を引き寄せたか」が見えてくれば、自分の創作に活用することができます。

その構図を参考にし、自分の感性をより良く発揮させる配置を考える。あるいは何を描きたいかを意識し、重要なものを交点上に置いたり、ずらしたりする。

それが、独自の構図作りの第一歩となるはずです。


これを基本とした画の作り方は、他にもいろいろあります。
次回から、そうしたビジュアル技術を順番にご紹介し、最終的には「どう文章に応用すればいいのか?」という問題にトライしたいと思います。