2011年3月17日木曜日

【物資を「運ぶ」のではなく被災者を被災地の「外に出す」】(1)


皆様へ
簡便を優先し一斉送信をさせていただいております。

ご支援、情報提供等ありがとうございます。
現在、福島を離れて米沢に移動しました。
その後の移動手段・道路状況等は刻一刻と変化しておりますが、
お陰様で向こう三日ほどの光明は見えております。本当に感謝しております。

以下、あくまで私見ですが、ぜひ向こう数日間から一週間ほどの間、
皆様にご検討していただければと思うことを記します。

●被災地に「物資を運ぶ」のではなく、「被災者を被災地の外へ出す」ことに、
時間と金銭を使うことを考えて下さい。
 
今回の災害において最も重要なのは、迅速な被災地からの脱出であることを思い知りました。

阪神大震災以降の災害対策の基本姿勢は、被災者が被災地付近にとどまり、
ライフラインの復旧と支援物資の到着を待つ「待機」です。
救助隊の原則も、人が避難所に「待機」していることを前提としております。

しかし今回のような、「広域かつ深刻な、複数の異なる未経験の災害が、短時間で連続し、
さらには繰り返し継続的に起こり続けた」場合、
被害の全体的な実態すら曖昧なため、支援は予想以上に遅れ、現地の状況悪化は急速に進みます。

だからこそ「待機」すべきだと考える方も多いでしょうが、
いったん「待機」すれば「移動」は刻一刻と困難になるばかりか、
現地で健康を保つ手段が驚くほど急速に失われてゆきます。

そのため、いかにしてライフラインが保たれている場所へ、
一刻も早く「移動」するかが重要でした。


●ぜひご支援可能な方々には、被災地およびライフラインを失った方々へ、
1) 安全な移動場所とルートを調べ、教えてあげる。
2) 移動手段を調べ、与えてあげる
(列車・航空・高速バスの空席確認や予約やキャンセル等を代わりに行う)
3) 移動後の宿泊場所を調べ、教えるOR用意してあげる
(ホテル等の空き室確認や予約やキャンセル等を代わりに行う)

ぜひ、これらの補助を行うことをご検討していただければと思います。

移動中の人々と根気強く連絡を取り合える時間的余裕がない場合も、
1)の、付近の地域や、そのときのニュースの報道内容を伝えるだけでも助かります。

移動が必要なとき、インターネットで確認する余裕はありません。
電話で問い合わせても、いつの間にか状況が変わっている可能性があります。

逆にライフラインが確保された場所に移動しさえすれば、
水も食料も通信手段も生活場所も、自力で探すことが可能になります。

被災地から車で一時間移動しただけで、一挙に状況が好転することが多いです。

●また、道路状況は二転三転しますので、念のためチケットなど予約を入れ、
状況に合わせてキャンセルしていく、ということも多くなります。
そう言う際は、「せっかく予約してあげたのに」と考えるのではなく、
「選択肢をそれだけ多く用意してあげられた」と考えてあげて下さい。

なお、いたずらに予約することで窓口をふさぎ、結果的に他の人の移動手段を阻んでしまう、
という可能性もあります。しかし、「移動」は一日から数日ほどの短期間で済みますので、
キャンセル待ちをすることで次々に別の人が予約できます。
大事なのは「必要なルートは確実に予約し」「いらなくなったルートは確実にキャンセルする」ことです。


●現在、宮城・福島から、米沢・山形へ移動することさえできれば、
通信は回復し、水・食料があり、病院やコンビニは一部を除いて利用可能で、
酒田・新潟・秋田などに到達することが必要になりますが、
タクシー・レンタカー・電車・飛行機・バスによる各地送迎が可能となります。
羽越本線・上越新幹線・高速バスが生きており、日本を南北に移動することができます。
北海道へも大阪へも移動できます。
少なくとも明日明後日は十分に可能です。

あるいは、福島原発のニュースのお陰で、福島空港発の各便がキャンセルになっています。
迅速に移動できるならば、福島空港に隙間があります。

しかし向こう数日で、物資不足・移動不能になる地域が、
宮城・福島の西側の県境から、一挙に日本海側の他県へ広がっていくと思われます。
そうなってしまっては、移動困難な地域がますます広がるでしょう。

明日から、酒田および一部の宮城県の港から、ガソリンの供給が試みられるそうです。
「だから待機するべき」ではなく、「だから移動するべき」と考えたほうが良いでしょう。

たとえ夜間であっても、
1)あらかじめ目的地の宿を確保した上で、
2)運転に慣れた各地のタクシーをあらかじめ電話予約し、
3)一時間程度の距離を進むたび予約しておいた現地タクシーに乗り換え、
ピストン輸送してもらうなどして目的地まで「移動」する。
これならガソリン不足を気にして長距離を嫌がる現地のタクシーも対応してくれますし、
常に現地の地理に慣れた運転手がいることでいざというときに困ることが少なくなります。

これが最善である可能性が高い、と言うことをご報告させていただきます。

●住んでいた場所を離れることは大半の方々にとって心理的苦痛を伴いますし、
安全な場所にいる者も、むやみと「移動」を勧めてよいものか迷うため、
様々な言い分を立てては、「待機」を選びます。

しかし被災者や、その周辺地域に住む者が、一人でも多く、長くとどまるほど、
その後の救災の労力は増えます。水・食料・ガソリン等は到底、間に合わなくなります。
ライフラインが回復するまで待機する、ではなく、
ライフラインが回復するまで別の場所に行っている、とするべきでしょう。

実際にライフラインが回復したとき、被災地やその付近で待機していた期間が一日でも長いほど、
病人やけが人が増加・深刻化する可能性があり、
現地で消費されたため改めて支援されねばならない物資は増え、
溜まった汚物等を洗浄したりするための水なども、余計に多く必要になります。

もちろん実際に移動するかどうかは現地にいる人々の判断次第ですが、
移動するための情報があるのとないのとでは心理的に天と地です。
「チケットをとってあげるから」「二時間並べばバスに乗れるから」と言われて動く気になる人もいます。

また、現地にいる人々の努力だけでは情報は手に入らず、
より状況が悪い場所へ移動してしまう可能性もあり、そのせいで「待機」を選んでしまいます。
「どこどこは水がないから行くな」「どこどこは電話で確認したところ水道が生きている」といった
情報だけでも、移動する気力につながります。

●太平洋側一帯に親戚・知人友人がおられる方は、出来る限り「移動」を勧め、
ナビを助けてあげて下さい。
また、「確実な移動手段」を、今のところは個別に教えてあげて下さい。
組織的に行うのは現時点では無理ですし、変化する状況に追いつけません。し、
「このサイトで調べればいいよ」「県庁に情報提供したよ」といった
漠然とした指示や行為は、あまり効果がありません。


●なお、組織的な発表や支援は、しばらくは期待できません。
支援に来られる自衛隊などプロの方々は、もちろん頼りとすべき存在です。
しかし彼らは一様に、避難者の「待機」や「救出」を大前提として訓練されています。
訓練された以上のことは彼らにはできませんし、被災者の健康保全などは無理です。
何より、現在の状況は、彼らが経験した訓練の「想定外」であるということを、ぜひ知っておいて下さい。

「こんなこと誰も経験したことがない。その場その場で対応していくしかない」と、
米沢のホテル関係者が言っておりましたが、至言だと感じました。
ガソリンを積んだタンクローリーに警察が付き添う光景など、誰が想像できたでしょうか。


※我が家への支援は、しばらく必要なさそうです。
重ねて、ご支援下さった方々に深く感謝申し上げます。

冲方丁拝