2011年3月17日木曜日

【物資を「運ぶ」のではなく被災者を被災地の「外に出す」】(2)

皆様

無事、新潟に到着しました。
明日、新潟空港から北海道千歳へ移動し、
母と妹夫婦のいる池田という街で体勢を整えることに決めました。

現在、ガソリン等の物資が、北海道から酒田市などへ運ばれているようで、
ライフラインや食料等が長期的に確保され続けるだろう、と判断してのことです。
また、今後の移動において、国内だけでなく国外も視野に入れられるからです。

上手くいけば、執筆に復帰したり、人を支援できる側に回れそうです。

受け入れ先を準備して下さった方々、励ましの言葉をお送り下さった方々、
本当にありがとうございます。
どうか引き続き、助けの手を求めている方々に、その手を差し伸べてあげて下さい。
あるいは、これから僕らが親戚知人を「移動」させる上で、
改めてご相談させていただくこともあるかもしれません。
そのときは、あくまでできる範囲で、ご協力していただければ幸いです。

本当に本当にありがとうございます。


以下、移動中に経験した事柄です。もしご参考にしたい方がいらっしゃいましたら、
ご自由に転送等して下さい。


●先日お送りしたご報告につきまして、付加すべき重要な点が二つあります。

1)「現地の天候」
現在、日本海側に雪が多く、道路・電車・空港で足止めを食う可能性があります。
移動中、天候のことは失念しがちですが、非常に重要です。
もし被災地の方と連絡する場合、当日・翌日の天気予報の最新情報を共有してあげて下さい。


2)「疲労は想像以上に早い」
先の見えない「移動」も「待機」も、驚くほど急激に体力・気力を奪います。
とにかく「移動」時は距離と時間を稼ぎたがって無理をしがちになりますが、
なるべく頻繁に宿を探して休息を取るよう勧めてあげて下さい。

逆に、「待機」時は、疲れているからじっとしていたくなりますが、結局は
ライフラインが確保されていない場所でじっとすることほど疲れることはありません。
いずれ疲労がピークに達して病気になります。むしろそれ以上、疲れないよう、
どうにか「移動」の手段がないか考えねばなりません。


3)「不特定多数を助けない」
誰かを「移動」させるためのナビや補助は、まず「親戚友人知人」に特定して下さい。
数人単位で迅速に判断し、動いていくことで可能なことが多く、不特定多数の方に対し、
同時かつ平等に有効な手だては、今のところ、ほとんどないと思って下さい。
逆に、集団が移動し始めた途端、様々なものが不足し、全員同時に動けなくなることが多いです。


●ご参考までに、移動中の心理状態について経験を二点ご報告します。
1)現状の「否認」
ものの本にしばしば書かれている災害時の心理状態ですが、
まさか自分がなるとは想像もしていませんでした。
「大丈夫、安心すべき、じっとするべき、何もするべきでない、心配ない」
といった現実の拒否です。
要は「どうなるかわからないから移動したくない」です。
この心理に引きずられないようにするのは、けっこうな精神力を使います。
具体的にどうフォローされれば良いのか僕も分かりませんが、
移動中、しばしばそういう心理状態になるということを知っておいていただければと思います。


2)錯誤の多発
おそろしく単純なことが瞬間的に分からなくなります。
これも、災害関係の書籍に見られる事例ですが、まさか自分がそうなるとは思わなかったことです。

たとえば僕の場合、エレベーターの「開」「閉」のボタンのどれが何だか本当にわからなくなりました。
ホテルでは「220」がいったい何を意味する記号か、立ち止まって考えてしまいました。
取り出したばかりの財布を、どのポケットに戻せば良いのか分からなくなりました。
これは人によって全然違うようです。
落ち着いてゆっくり考えれば、自然といつもの判断が戻ってきます。

単に焦っているのではなく、日頃とは脳の使い方が全然違っている感じです。
緊張下で様々なことを考え続けるうちに、日常的な判断力が逆に鈍ってゆきます。
ですので、誰かから「チケットなど大事なものを置き忘れていないか」
といった軽い確認やフォローをしてもらえるだけで、かなり助かります。


 冲方丁拝