【物資を「運ぶ」のではなく被災者を被災地の「外に出す」】(3)
皆様へ
引き続き冲方です。
●下記、先日のご報告とあわせて、ご参考になるかどうか分かりませんが、
我が家がとった移動ルート等を列挙します。
長文ですので、必要のない方はスルーして下さい。
先に、結論ですが、
※大人二人・子供一人・自家用車なし、という条件で、
1)福島県福島市から新潟市まで、十万円と二日~三日間。
2)新潟から北海道(関東・関西)まで、十万円と一日~二日間。
もしかするとこれが一つの目安になるかもしれません。
より「安く・短く」することが、個人においても行政においても課題になると思います。
内訳は下記です。
※福島から新潟まで移動する間、約二日間と十万円を費やしました。
うち最も多い現金決済は、タクシー代総額の六万五千円強、飲み物や食べ物の五千円強。
それ以外は、今後の飛行機代やホテル代もふくめ、カード決済です。
※新潟から北海道まで移動する間、飛行機代が八万円弱、宿代が二泊で五万円強、時間は一日半の予定。
※車と飛行機などの移動が自然と最も高くつきます。逆に、いったん移動すれば、高額のホテルしか
空いていないというのでない限り、大幅な出費は考えなくともよくなるということでもあります。
「移動ルート」
○14日ルート決定
※情報等のご支援により数時間でルート決定できました。
BETTER ルート1)福島→米沢→山形→酒田→新潟
BEST ルート2)福島→米沢→坂町→新潟
※とにかく新潟を第一次目標としました。
※あらかじめタクシー会社に移動可能距離を問い合わせ、米沢なら可能とのことでした。
※米沢に着いてから、どのルートが可能か確認することにしました。
※米沢のホテルを探し、三日分予約しました。
○14日深夜午前0時 出発 福島からタクシーで米沢へ
※僕、家内、四歳の長男が、トランク二つ、バッグ二つに荷物を詰めて移動しました。
○15日午前1時半頃 米沢に到着
※深夜ですがあらかじめホテルに連絡していたためすぐにチェックインできました。
※震災被害がほとんどないことを確認しました。
※水道と電気が生きていることを確認しました。
※車で一時間ほど移動しただけでライフラインが画然と違うことを確認しました。
※休眠してのち、終日、情報収集と今後のルート確認に費やしました。
※レンタカーはのきなみ使えないことを確認しました。
※ガソリンを筆頭に物資が急速に不足していることを確認しました。
※物資不足でコンビニが閉店する前に、急いでATMで金銭を確保しました。
※コンビニが昼過ぎには閉店するなど、じきに米沢周辺も深刻な物資不足になることが
予想されました。
※各都市のホテル・駅等に連絡し、
BETTER ルート1)福島→米沢→山形→酒田→新潟
が可能であることを確認しました。移動手段は、
米沢→山形 タクシーで可能とのこと
山形→酒田 高速バス 一日三百人ほど並んでいるが乗れなくはないとのこと
酒田→新潟 羽越本線が運行中
とのことでした。
※現在、ガソリンの供給ルートとして、
北海道から酒田へ運ばれていることを確認しました。
これにより、それぞれ親族等のいる関東・関西・北海道のうち、
母と妹夫婦がいる北海道を最終目的地とすることを検討しました。
現地の状況を母と電話で確認すると、
「震災前と何も変わらず、物資の買い占めなどは全く起こっていない」とのこと。
これにより北海道へ行くことが最善と判断しました。
※我が家が米沢に到着した後、次々に各地から移動してきた人がホテルを訪れました。
ガソリン切れで移動不能になった人々も多かったようです。
※ANAのHPを照会し、空席を確認。
即、新潟空港から北海道千歳行きのエアチケットを予約。
その後数時間もしないうちにHPでは「二日後まで空席なし」となりました。
ギリギリで購入できました。
※夕方になり降雪が始まり、雪で道路が断たれるかも知れないという可能性に直面しました。
とともに、以下の指針を立てました。
:「どこで足止めされても良いよう、通過する都市全てのホテルを予約する」
:「現地や交通状況などは、一度ではなく何度も、複数の人や機関に問い合わせる」
:「いったん決めたルートに固執しない」
※一晩中、「本当にこれで良いのか」「家に戻るべきではないか」という考えに襲われました。
被災時の、いわゆる「状況の否認」が自分の心に起こっていたことを初めて実感しました。
「大丈夫だ、何も起こらない、安全だ、動かないほうがいい、じっと休んで回復に専念すべきだ」
などと、心が現実を拒否し始めており、
この「動かないほうがいい」という考えに従うことが、逆に最も危険なのだと実感しました。
実際は、物資が不足し始めている街で、めども立たないまま、じっとしているわけにはいきません。
翌日、雪が積もらないことを祈るばかりでした。
○16日午前10時 出発
※積雪は大したことはありませんでしたが、降雪の多さに焦慮しました。
万一、雪によって道をふさがれたら、行くも戻るも不可能になります。
除雪車がガソリン不足で動かない、という事態を想像してぞっとしました。
※朝食後、ルートを再確認し、ホテルのフロントを通して出発の一時間前にタクシーを予約し、
あらかじめ行き先を相談することで燃料が豊富な車両を回してもらえるようにしました。
※タクシーの運転手と相談すると、「新潟でガソリンが補給できるから行ける」となりました。
米坂線の運休とレンタカーが使えないことから断念していた、
BEST ルート2)福島→米沢→坂町→新潟
が可能であることから、新潟行きを頼みました。
※前日に予約した宿は全てキャンセルしました。
宿によってはキャンセル料は請求しませんと言ってくれました。
楽天などによってカードで予約してしまうと自動的にキャンセル料が発生しますので、
電話により口頭で予約する、もしくは現地で現金決済、が最も融通が利きます。
※タクシーの車内で、携帯電話で新潟の宿を予約しました。
※降雪がひどく、途上、二度も、横転して救助を待つ車を見ました。
※移動は、夜間よりも降雪時のほうが危険です。
現地の運転に慣れたタクシー運転手でない限り、雪の中で運転すべきではありません。
※数時間かけて山形県境を越え、新潟県に入った途端、状況が好転しました。
ガソリンスタンドは通常通り営業していました。
複数のタンクローリーが山形・福島・宮城方面へ移動するのを見ました。
物資の買い占め等は全く起こっていないということでした。
※午後、新潟市のホテルに到着しました。
※各地から到着した人々がロビーにちらほら見えました。
※夕方から、新潟市内のコンビニが混雑していたことを確認しましたが、
これは物資不足が原因ではなく「計画停電」に備えようという動きでした。
※また、品不足でホテルのコンビニが閉店していましたが、買い占めが原因ではなく、
商品が輸送されず、自然となくなってしまったとのことです。
※今はまだまだ物資が豊富ですが、続々と、酒田・新潟方面に向かって避難者が
増加しておりますので、物資不足が広がることが予想されます。
やはり移動できる人は、今の内に移動すること、
そして、「駅や空港などにアクセス可能な都市にいつまでも滞在しないこと」をお勧めします。
迅速に移動し、ホテルの部屋などを空けることが、次に来る人たちのライフラインを
確保することにつながります。
●個人的に希望していること
以下は、今、個人的にこうあって欲しいという願望です。
結局は、ただの愚痴かも知れませんので、あまり転載などしないほうが良いかも知れません。
1)「物資輸送トラックは被災地で荷物を下ろして空になったら、現地にいる人間を積んで帰る」
現在、物資を輸送しているトラックによって、希望する被災者を、
ライフラインが確保された場所まで運ぶ。
道交法上の問題もあるでしょうし、過酷な移動になりますが、
もはや人間を物のように運ばねば、健康保全が間に合わない人々がいます。
2)「義援金をホテルとタクシー代に充てる」
向こう一週間ほどは、義援金を、物資輸送等だけでなく、
「被災地に近隣する都市、駅や空港付近の都市などの
タクシーとホテル代に充てて、被災者が低額で利用できるようにする」ことで、
相当数の人が助かるはずです。
3)「首都圏や関西以南などにいる人々の、海外旅行の奨励」
一時的に一般市民の人口が少なくなればなるほど、物資の面での回復が容易になるのは過去の災害事例から明らかです。
特に、物資の買い占めなどに走るだけの経済力を持つ方々には、そのお金を義援金に回すのでない限り、
ぜひ海外旅行に費やしてしばらく帰って来ないでいただきたい。
そうすることで国内の食料や電力消費等を軽減できるはずです。
連休などを利用して、ぜひ、近隣の韓国や香港やシンガポール、あるいはタヒチやバリなど、
安全で物資が豊富な国へ、バカンスなどに行っていただきたい。
国外へ出ることで、より客観性の高いニュースにもふれることができるでしょう。
不謹慎なようですが、そもそも数日程度しか保たないような物資の買い占めなど無駄であり、
そんなことをするくらいなら他国に長期滞在してもらうほうがいい。
もしご参考になれば幸いです。
冲方丁拝